2011年1月号 韓国の韓医学と日本の漢方
韓国で日本の漢方にあたる伝統医学を「韓医学」という。韓医科大学は現代医学の医科大学からまったく独立している。そこの卒業生は盛大に韓医学による医療だけを行っている。筆者はこのたび韓国の原典学会に招聘されて、韓医学を見てきた。原典学会とは中国医学の古典を学ぶ学徒の学会である。ところで、韓医学の制度は日本の漢方と大きく違った。日本には韓医科大学に相当する大学はない。韓医科大学では、いわゆる漢方に該当する湯液学と、鍼灸、マッサージのすべてを正課として学ぶのである。医師は症状に応じて、薬を与え、鍼灸を行い、按摩をすることができる。
日本では、現代医学を学んだ医師が独学に近い形で漢方を学び、治療を行い、漢方薬局では薬剤師が処方した漢方薬を販売している。そして鍼灸、按摩は独立した職種で、鍼灸学校を卒業後、国家試験に合格して資格を得る。
日本でなぜこのような形態をとるようになったか、それは明治初年、医師国家試験が始まったとき、試験問題が西洋医学であったために、漢方医は合格する見込みがなく、医師の社会から排除されたのであった。しかし、庶民は江戸時代からなじんできた漢方を好み、漢方薬店から薬を貰い、鍼、灸を愛し、按摩に頼る生活をしていた。そこで、政府は鍼灸師に営業免状を与える制度を設け、鍼灸学校を設けたのであった。
順天堂大学名誉教授 酒井シヅ
投稿者 : 2010年12月15日 09:29 : 無断転載を禁じる
