2011年7月号 保険料収入で賄えない義務的経費

高齢者への公費拡充が急務

社会保障制度改革の柱の一つである高齢者医療制度改革への法案化作業が難航するなかで、2011年度の健保組合財政は6090億円の赤字となり、当該年度の保険料収入では保険給付費など義務的経費を賄えない見通しであることが健保連の「11年度予算早期集計」で明らかになりました。巨額赤字の要因は増加する高齢者医療費拠出金。高齢化を迎え、加速度的に減少する若い世代への過剰な負担をいかにして避けるか。健保組合の財政は、公費負担のあり方を含め現行制度の問題点を浮き彫りにしています。

調査は全国の1447組合のうち、1315組合の集計結果から全体を推計しました。健保組合全体の赤字額は6090億円で、前年度予算(6621億円)と比べて532億円の縮減。これは保険料率の大幅な引き上げによるもので、高齢者医療費拠出金の伸び率(9.1%)が保険料収入の伸び率(6.4%)を上回るといった構造的な赤字要因が解消されたわけではありません。

全組合の平均保険料率は約7.93%で約0.3ポイントの増。拠出金などの支出増を保険料率の引き上げで補填する組合は集計対象の4割にあたる527組合。これらの組合は平均約0.8%の料率引き上げが見込まれていますが、それでも保険料収入に対する保険給付費や高齢者医療費拠出金など義務的経費は100.9%。09年度以降、義務的経費を保険料収入では賄えない状況が続いています。

08年度の高齢者医療制度の発足で急増し、組合財政の赤字要因となっている高齢者医療制度への11年度拠出金は総額で2兆8800億円。保険料収入に占める割合は1.1ポイント増の44.9%。厚生労働省の推計では、この割合は今後さらに高まり、15年度には全組合平均で5割の水準を越えるとみられています。

給付費の5割に公費がある後期高齢者医療制度とは対照的に、前期高齢者医療制度には公費投入がないなど、制度の財源構造の問題点はかねてから指摘されてきました。また、保険システムの特性である給付と負担関係の分りやすさといった点でも、他制度の給付に保険料の半分以上を充てる仕組みには大きな歪みがあると言わざるを得ません。

厚生労働省はこれまでに、民主党政権発足後に設置した高齢者医療制度改革会議の「最終まとめ」に沿って改革の大枠をまとめていますが、与党内の意見調整、党内手続きは進んでいません。このため、政府が6月に成案を得る方針の「社会保障と税の一体改革」と法案化との関連が大きな焦点となっていますが、制度改革で大切なのは、高齢者が安心して医療を受けることができ、現役世代の負担が過重にならない仕組みを構築することです。

保険原則の下では運営が不可能な65歳以上を対象に別建ての制度を創設。制度の持続性を高めるために、若年層の負担を軽減し、給付費の5割を公費で賄う。健保連の改革提言は社会保障の機能強化という点でも制度抜本改革への道筋を示していると言えるでしょう。

投稿者 : 2011年06月15日 08:01 : 無断転載を禁じる