2012年3月号 政府が「一体改革素案」を決定

2015年10月に消費税率10%へ 制度の効率化が今後の課題

政府・与党は先月6日、消費税率を現在の5%から2014年4月に8%、15年10月に10%まで引き上げるなどを柱とする「社会保障・税一体改革素案」を決定しました。与野党協議を経て成案を得たいとしていますが、わが国の足元の財政は3年度連続で新規国債発行額が税収を上回るなど危機的な状態。社会保障改革、財政立て直し、消費税率引き上げの一体改革に向け今国会に関連法案を提出できるかどうか。当面、3 月までの野田改造内閣の政治対応が焦点となります。

政府が昨年末に決定した2012年度予算案の一般会計総額は約90.4兆円。歳出は、政府の政策経費にあたる一般歳出が約51.8 兆円、国債の償還などに充てる国債費が約22兆円、地方交付税が16.6兆円。

これに対し、歳入は税収が42.3 兆円、為替介入資金を管理する外国為替特会の剰余金や日銀の納付金など税外収入が3.7兆円、新規国債発行は44.2兆円で、歳入の49%が国債頼み。

問題が深刻なのは、高齢化で年金や医療・介護など国の社会保障予算が毎年1.2~1.3兆円規模で増えるなか、税収などの安定財源で必要財源を賄えていないことです。野田佳彦首相は昨年8月の民主党代表選で、現在のわが国の姿について「日本は国家的に大がかりな詐欺をやってきたのと同じだ」と訴えました。後代世代に負担を先送りしている政治風土への強い警鐘を鳴らしたものです。

現実問題として、国の予算総則で定める基礎年金、高齢者医療、介護保険の「高齢者3経費」(約17.2兆円)に対する消費税財源の不足額は11 年度末で約10兆円に達し、国債増発への強い圧力となっています。12年度予算案では基礎年金に必要な約2.5兆円の財源メドがつかず、当面は年金積立金の流用でつなぎ、将来の消費増税で返済する「交付国債」で賄うつじつま合わせが行なわれました。

一方、政府は10年に閣議決定した「財政運営戦略」で、基礎的な財政収支の赤字幅を15年度までに対GDP(国内総生産)比で半減し、20年度に解消する目標を掲げています。「一体改革素案」は、「社会保障の安定財源確保と財政健全化の同時達成」に向け、消費税率引き上げへのロードマップを示したものですが、その実現性は現段階では不透明です。

社会保障制度の改革を方向づける意味で注目された12 年度の政府予算編成では、本来水準より2.5%高い年金額を3年かけて是正する方針が示される一方、暫定的に1割に据え置かれている70~74歳の医療費窓口負担を本来の2割に戻す案は見送られ、合理化余地があるとされた診療報酬・介護報酬は、ともに引き上げが決まりました。素案を提示した政府の姿勢は評価されますが、「一体改革」の前提でもある制度効率化による1.2兆円の財源捻出、社会保障改革の全体像は依然として見えていません。

投稿者 : 2012年02月15日 08:01 : 無断転載を禁じる