2012年2月号 持続可能な社会保障制度構築へ

「一体改革」は再生への一里塚 2012年は政治決断の正念場

持続可能な社会保障制度の構築―わが国が直面する課題です。政府は消費税率の引き上げ時期などを盛り込んだ関連法案を今年3 月までに国会に提案。これを契機に「社会保障・税の一体改革」に本格的に着手したい意向ですが、問題は衆院と参院で与野党の勢力が異なる“ねじれ国会”。社会保障費を赤字国債に頼る財政構造から脱却するための道筋をつけられるかどうか。2012 年・辰年は政治の責任と決断が問われる年になりそうです。

国立社会保障・人口問題研究所によると、2000 年に17.4%だった65 歳以上の人口割合は、戦後の団塊世代(1947~49 年生まれ)が75 歳になる25年には28.7%に。文字通り大きな「塊世代」の高齢化で社会保障費の負担構造は激変し、25年には、現役(生産年齢人口)2.1人で1人の高齢者を支える社会が到来します。

医療や年金、介護などに支出される社会保障給付費は11 年度の見込み額で約108.1兆円。厚生労働省の試算では25 年度には151兆円規模となり、この間に年金1.2倍、医療1.6倍、介護は2.5倍の給付増が見込まれています。

一方、国の財政も深刻です。11年度の一般会計当初予算は約92.4兆円。新規国債の発行額は、過去最悪だった前年度並みの約44.3 兆円で、当初予算としては2年連続で借金が税収(約41兆円)を上回る変則予算。社会保障への影響も深刻で、国の予算総則で定める基礎年金、高齢者医療、介護保険の「高齢者3経費」(約17.2兆円)の消費税不足額は11年度で10兆円に達する見通しです。
こうしたなかで、政府が制度再生に向けて提案しているのが「社会保障・税の一体改革」。2010年代半ばまでに消費税を10%に引き上げ、増税税率のうち3%分は基礎年金の2分の1を国庫負担とする財源や社会保障制度の拡充経費に、残りの2%分は「高齢者3経費」の不足財源に充てる構想ですが、この構想に対しては、すでに多くの問題点も指摘されています。

「一体改革案」は、15年時点で必要な「充実」費用を3.8兆円と見込み、うち1.2兆円は給付費減や負担増などの「効率化」で捻出する方策を提案していますが、高齢者医療制度を始めとする医療制度や年金制度、介護保険などの改革の行方は不透明。15 年度以降の財源政策が見えないなかで、将来的な社会保障制度の着地点も描き切れていません。とはいえ、「一体改革」が改革への“一里塚”であることだけは確か。消費増税の使途を社会保障費に限定し、必要な公費を消費税で確保する方針を打ち出した政府案。高齢者医療や介護など緊急度が高い分野への公費配分が改革の成否を左右すると言っていいでしょう。

唐の詩人・王昌齢の「従軍行」に次のような一節があります。
「但龍城の飛将をして在らしめば胡馬をして陰山を渡らしめず」

国難に際し、有能な将軍を欠いたために、敵(胡)に攻め入られた国民の嘆きを詠ったものですが、さて、わが国はどうか。指導者たるべき人が先頭に立たない限り、社会保障の構造改革は前に進みません。

投稿者 : 2012年01月15日 08:01 : 無断転載を禁じる