2011年2月号 「2011年」民主党政権に望む 安定財源確保へ明確な道筋を

拙速避けたい社会保障改革

社会保障制度の持続性をいかに確保するか―高齢化が進むなかで、日本が直面している課題です。政府は、今月に召集する通常国会に高齢者医療、介護保険両制度の改革法案、2013年度には年金制度改正案を提出する方針ですが、制度改革で最大の焦点となるのが財源問題。社会保障費の不足財源を赤字国債で賄う財政構造から脱却し、国民の将来不安をいかに取り除いていくか。2011年、民主党政権にとっては正念場となる“兎年”です。

国立社会保障・人口問題研究所によると、2000年に17.4%だった65歳以上人口の割合は、戦後のベビーブーム期に生まれた団塊世代全員が75歳に到達する25年には28.7%に高まると見込まれています。支え手の減少に伴い、25年には現役層(15~64歳人口)2.1人で1人の高齢者を支えなくてはならなくなる計算です。

医療や年金、介護などの社会保障給付費は08年度で94.8兆円。厚労省の同年度時点の試算では、25年度に必要となる社会保障給付費は141兆円。06年からの20年間で年金1.4倍、医療1.7倍、介護費用は2.6倍に膨らむと予測されています。

2000年度の介護保険制度の創設、04年度の年金制度改正、06年の高齢者医療制度の創設(08年度実施)。これら一連の制度改正は、いずれもが少子高齢化をにらんだ改革と言えますが、問題は政治レベルで税財源を議論する環境がほとんど整わなかったことです。

こうしたなかで深刻の度合いを強めているのがわが国の国家財政。10年度の国の一般会計予算92.3兆円のうち、政府の政策経費にあたる一般歳出は53.5兆円。社会保障関係費が全体の51%を占めるなど歳出構造が社会保障費にシフトするなかで、税収は37.4兆円。不足額を穴埋めする赤字国債発行額が44.3兆円に達し、国と地方を合わせた累積債務残高が10年度末で900兆円を超えると見られているためです。

一方、国の予算総則では、消費税の使い道を「基礎年金」「老人医療」「介護」の3分野に充てることが決まっていますが、10年度の消費税収入見込みは12.1兆円。5兆円余りが地方交付税などで地方に配分されるため、国が使える財源は約6.8兆円。3分野に必要な国庫支出額は16.6兆円で、財源不足額は9.8兆円に達します。

民主党の税と社会保障調査会は、「消費税の社会保障目的税化」を提言していますが、基礎年金の国庫引き上げ財源の恒久財源化すらいまだに手つかずのまま。厚労省の高齢者医療制度改革案には、財源不足を理由に、健保組合など特定の医療保険者の負担増で国庫財源を捻出する施策が盛り込まれるなど、政府の財政政策の行き詰まりを象徴するような提案も行われています。

「20年度までに財政収支を黒字化」、「強い社会保障の実現」を掲げる現政権。『兎の上り坂』とまではいかないまでも、財源問題や社会保障の在り方について議論を深め、政策目標実現への道筋だけはつけてほしいものです。

投稿者 : 2011年01月15日 08:01 : 無断転載を禁じる