2011年11月号 健保組合、四千億円超の赤字に

健全化へ道筋見えない保険財政 一体改革に求められる公費拡充

野田佳彦内閣発足から約1カ月。「社会保障と税の一体改革」「震災復興」など重い政治課題が山積するなかで、医療保険制度の担い手である健保組合の2010年度決算が4000億円超の巨額赤字となる見込みであることが健保連の集計で明らかになりました。医療、年金、介護の高齢者3 経費だけで約10兆円が不足している国の財政。医療保険財政の健全化を含め、必要財源をいかに確保するか。新政権の政策能力が問われています。

調査は全国1458組合の10年度決算見込みを集計したもので、それによると、同年度の経常収入総額は6兆2854億円、加入者への保険給付費や高齢者医療制度への拠出金などの経常支出は6 兆7008 億円で、収支は4154 億円の赤字。赤字組合数は全組合の約8割にのぼっています。

健保組合財政の最大の圧迫要因である高齢者医療制度への拠出金は総額で2兆6419億円。過去の拠出金精算もあって、前年度比2.83%の減となりましたが、標準報酬が低迷する一方、拠出金負担は高止まりしたままで、赤字の構造要因は解消されていません。保険料収入に占める拠出金割合も43.0%に達しています。

現在、65歳以上の高齢者に必要な医療給付費は19.2兆円(75 歳以上12.8兆円、65~74歳6.4兆円)。後期高齢者の給付費の5割が税で賄われているのに対し、前期高齢者の給付費には税投入がないのが特徴。このため、現行の負担方式に対しては、制度の持続性や現役層の過重負担を指摘する声が強く、参院・厚労委は10年の国保法改正に際し「公費拡充」を求める附帯決議を採択していますが、一般会計予算の4 割強を赤字国債に頼る国家財政が壁になって、公費拡充への道筋は見えていません。

こうしたなかで政府が提案しているのが、「社会保障と税の一体改革成案」。
社会保障財源を「2010年代半ばまでに10%に引き上げる消費税」で確保。医療・介護については約1.4 兆円の財源を投入して、機能分化と資源の集中化を徹底。入院日数の短縮や通院治療の適正化、介護重度化の防止などで約7300 億円を抑制する構想です。

高齢者医療制度の改革は

  • 75 歳以上も現役世代と同じ制度に加入
  • 国保財政運営の都道府県単位化
  • 被用者保険の支援金の全面的な報酬割への切り替え―
などが骨子。

国の財政や震災対応を考慮すれば、税・社会保障一体改革案に盛られた一連の施策は実現を急ぐ必要がありますが、問題は政府案からは医療保険財政の悪化を食い止める手段、制度の持続性の具体的な確保策が読み取れないことです。

厚労省の推計では、健保組合の拠出金割合は25年度には保険料の51%まで高まるとみられています。税と保険料で構成する国民負担率は10年度で38.7%。
過去10 年間で税負担率が5.8ポイント減少する一方、保険料負担は6ポイント増加。国民負担率の構造が大きく変化するなかで、現役層の保険料負担には限界が見え始めています。公費拡充にどう道筋をつけるか。一体改革の重要な課題の一つです。

投稿者 : 2011年10月15日 09:01 : 無断転載を禁じる