2010年9月号 財源問題が「高齢者医療」の焦点に 改革に必要な公費拡充への道筋
医療保険の財政安定化も課題
厚生労働省は8月末までに、現行高齢者医療制度に代わる新たな制度の大枠を「中間まとめ」の形で公表する方針ですが、「強い社会保障」と「強い財政」を掲げ、社会保障の基盤強化と財政の健全化を目指す民主党政権下で、どのような改革構想が示されるかが注目されます。改革のキーワードは「制度の持続性」―。中間まとめを契機に年末の最終報告に向けた意見調整が本格化することになります。
75歳を年齢区分に「前期」と「後期」に分ける現行の高齢者医療制度の最大の特徴は、「後期制度」の給付費には5割の公費投入があるのに対し、65~74歳層が対象の「前期制度」には公費負担が全くなく、給付費の全額が医療保険制度間の財政調整(前期高齢者の加入割合が各制度とも同一とみなして費用を分担)で賄われていることです。
国庫負担を抑制し、健保組合など被用者保険の保険料によって、高齢加入者が多い市町村国保を財政支援する点で、小泉政権(当時)の「財政構造改革」を色濃く反映した仕組みといえますが、この方式では「制度の将来的な維持は困難」との見方が関係者の間では一般的です。
06年度の高齢者医療制度創設後に、雇用・所得環境などわが国の経済・社会の構造的な変化が顕在化し、高齢者医療を支える医療保険財政が急速に悪化するなど高齢者医療制度の財政の枠組みが大きく揺らぎ始めているからです。
高齢者医療制度が施行された08年度の健保組合財政は、新制度への拠出金が前年比18.3%の大幅増となり、3060億円の赤字を計上。09年度は保険料の収入減も加わり、6150億円の巨額赤字が見込まれています。協会けんぽの財政赤字も前年度比2310億円増の4600億円へと赤字幅が拡大しています。
被用者保険側から08年度で約2.4兆円の財政支援を受ける市町村国保も同年度で2384億円の赤字。保険料収納率も88%まで落ち込んでいます。
厚生労働省はこれまでに、高齢者医療制度改革の制度体系について、現役サラリーマンの高齢者と被扶養者は被用者保険に継続加入し、それ以外の高齢者は国保制度に加入する構想を明らかにしていますが、制度の枠組みを方向づける高齢者の負担水準や財源の具体的な負担方法は明確になっていません。高齢者医療制度の改革で国保制度の役割を高めるというのであれば、少なくとも、「中間まとめ」では、国保財政安定化への財源確保の道筋は示される必要があります。
雇用や所得の動向も見逃せません。被保険者数や保険料に大きな影響を及ぼすからです。厚生労働省の国民生活基礎調査(09年)によると、年収400万円未満世帯が全体の約47%。年間所得が中位勤労者の半分以下の「貧困者割合」は約3割(08年OECDデータ)。非正規労働者割合は08年度で約34%に達します。低所得層や高齢者給付への公費拡充要請は極めて高いとみるべきでしょう。「強い社会保障」の実現には安定した財源の確保が欠かせないことを指摘しておかなくてはなりません。
投稿者 : 2010年08月15日 18:01 : 無断転載を禁じる
