2010年10月号 高齢者医療制度改革の視点 「国会附帯決議」の実現を

制度維持に公費拡充は不可欠

政府は2008年4月にスタートした「前期」「後期」の高齢者医療制度に代わる新たな制度案を年末までにまとめ、来年の通常国会に改正案を提出する方針ですが、制度設計で最大の焦点となっているのが公費を含めた財源問題と保険料や一部負担金など高齢者の負担水準の問題。現役人口が少子高齢化で急速に減少するなかで、高齢者医療の財源をどう確保し、世代間の負担格差をいかになだらかなものにしていくか。この仕組みづくりが新制度の枠組みを決定することになりそうです。

65歳以上の高齢者に必要な医療給付費財源は、2010年度で約17兆円(65~74歳の「前期」が5.3兆円、75歳以上の「後期」が11・7兆円)。後期制度は給付費の5割を公費、残りを高齢者自身の保険料(約1割)と現役層の支援金で分担。これに対し、前期制度では給付費の全額を医療保険各制度間の財政調整で賄う仕組みが導入され、調整による被用者保険から市町村国保への財政移転額は同年度で約2.4兆円にのぼります。

他制度と比べて高齢者の加入率が高い国保制度を被用者保険全体で支援する仕組みは必要ですが、問題は高齢者医療費に対する公費の負担率が相対的に低いために、結果的に現役サラリーマン層の負担が過重になっていることです。

実際、高齢者医療制度が施行された08年度の健保組合の拠出金は前年度比18.3%の大幅増を記録。同年度で3060億円の赤字を計上したのに続き、09年度で6150億円、10年度には赤字額が6600億円に膨れ上がる見通しです。保険料収入に占める拠出金割合は平均で43.6%。健保組合の裁量で使える保険料は約56%にとどまります。

前通常国会では、国保法等の改正案を審議した参議院厚生労働委員会で、「高齢者医療制度の費用負担調整は、若年者の負担が過大なものとならないよう公費負担を充実すること」との附帯決議が採択されました。現行の費用負担方式の問題点を踏まえ、制度再構築への指針を示したものと言っていいでしょう。

制度改革議論で財源負担問題と並んで重要な論点となっているのが高齢者の負担水準の在り方です。前回の制度改正では、医療費負担の透明化を高めるために、高齢者全員に保険料負担を求めるとともに、一部負担金の見直しが行われましたが、これらの措置については、経済状況の悪化もあって、大幅な軽減措置が講じられています。軽減に伴う国庫財源は制度実施から3年間で約7100億円。新制度では、高齢者の負担能力の評価基準と合わせ、高齢者自身の保険料や一部負担の水準をどう設定するか、軽減財源の在り方を含め、議論を深めなくてはならない課題です。

厚労省の推計では、現在6.3万円の高齢者の年間保険料は2015年には8.5万円に上昇し、同年度の健保組合の保険料収入に対する拠出金割合も平均で5割を超えます。参議院の附帯決議が求める公費の拡充が制度の持続性の鍵を握っていることだけは確かです。

投稿者 : 2010年09月15日 08:03 : 無断転載を禁じる