2009年10月号 概算医療費34.1兆円に

必要な「高齢者」の体系整備 ~医療効率化へ山積する課題

2008年度の1年間に国民が使った概算医療費は34兆1000億円、うち70歳以上は14兆8000億円で、全体の43.5%を占めることが厚生労働省の「医療費の動向」で明らかになりました。増え続ける高齢者医療費をどのような医療体系で支えていくか、社会全体で考えなくてはならない問題です。

「概算医療費」は自己負担医療や労災などを除いた医療費で、国民医療費の約98%。08年度は診療報酬が0.82%のマイナス改定となった影響で1.9%増にとどまりましたが、医療費増6200億円の5割が70歳以上高齢者の増分。医療費は今後、年金給付の伸びを上回るペースで増加し、25年の医療給付費は48兆円と見込まれています。

高齢者は疾病率が高く受診頻度も高いなど、高齢化が医療費増の大きな要因であることは統計学的にも明らかにされています。しかし一方で、医療費には世代間や地域間で大きな格差があり、医療内容や診療報酬の在り方をめぐり、関係者の間で多くの議論があることも事実です。

概算医療費の1人当たり額は26.7万円。70歳以上はその2.8倍の75.7万円、75歳以上では3.2倍の86.3万円。また、75歳以上の医療費には福岡県(108万1244円)と新潟県(70万2778円)で1.54倍もの格差があります(国保中央会集計)。
政府は医療費増に対応するため、06年の制度改正(08年度施行)で「前期・後期」の高齢者医療制度を創設。同時に医療保険者に義務づけた生活習慣病対策、診療報酬の改定、ジェネリック薬の使用拡大などを通じ、医療の効率化に取り組んでいますが、「効果は限定的」との見方が一般的です。

「後期制度」に反発する高齢者層に配慮し、保険料や一部負担金が大幅に軽減されたほか、12年度までに療養病床を22万床(現在33万床)とする病床再編、慢性疾患診療費の包括化、終末期医療の環境整備などが計画通りに進んでいないためです。
確かに、医療費格差など医療問題の解決には行政、経済、地域など広範な領域との調整が必要です。病床数の問題もその一つ。
我が国の06年の人口千人当たりの病床数は14.0床。ドイツの約1.7倍、米国との比較では4.4倍に達します。これに対し、百床当たりの医師数は15人で、欧米の3分の1から5分の1にとどまります(OECDヘルスデータ2008)。

この数字をどう見るかはさらなる検証が必要ですが、病床数の調整問題は医療効率化への課題であると同時に、医療保険財政にも影響する問題です。秋口から本格化する診療報酬改定をめぐる議論で、どのような方向性を示すことができるか。私たちも注目しておきたい課題の一つです。

投稿者 : 2009年09月15日 08:40 : 無断転載を禁じる