2008年12月号 「未来」へ何を選択するか

政治に求められる真摯な説明

民主党が制度廃止を掲げ、自民党は制度見直し時期の前倒し方針を決めるなど、高齢者医療制度がクローズアップされています。制度の財源支援者である私たちにとっても見逃せない問題です。

今年4月に発足した「前期」「後期」の高齢者医療制度は、世代間の負担関係を明確にすることで、国民合意を形成し、皆保険制度を維持していくことを最大の目的としています。

「一律に高齢者を社会的弱者とは見ない」。これが新制度の設計理念といえます。現役層とのバランスを考慮し、75歳以上の給付費財源の1割相当額を高齢者自身の保険料で賄い、一定額以上の所得者には、現役並みの一部負担を求める施策が取り入れられました。

ただ、これら制度に仕組まれた施策のすべてが実施されたわけではありません。保険料の年金天引き問題など高齢者の不満を背景に、一部負担金の引き上げ凍結や保険料の大幅軽減措置が政治主導で実施されたからです。

一方、現役世代は後期高齢者の保険料分と公費負担分を差し引いた残額を「支援金」、また、前期制度へはこれとは別に「納付金」を負担します。20年度の健保組合の予算によると、高齢者医療制度への負担は健保組合全体で約2.8兆円。保険料の46.5%が支援金・納付金に充てられます。

経済的にゆとりのない高齢者の負担は軽減すべきです。しかし、医療費はどのような制度を設計しても、高齢化が続く限り減ることはありません。今回の制度改正は、現役世代への過剰な負担を避ける目的もあったはずです。制度創設の理念に照らして、高齢者の負担軽減はどのような位置づけをもつのか、現役層の負担増にはどう対応しようとしているのか。政治には説明責任があります。

その意味で、ニクソン政権で商務長官を務めたピーター・G・ピーターソンの著書「未来への選択」は示唆に富みます。米国退職者協会の会員を前に、巨額な財政赤字が子孫に与える深刻な影響を語り、対処策を問いかけた次のくだりです。

「すべてを話し終えた後、私は彼らに訊ねた。若い世代の負担を軽減するために、あなたの必要額を超える連邦給付の一部を諦めようと考える方はいるでしょうか、と。ほとんどの人が手を挙げたのである」。

この文脈は、事態を直視する目と、起こっている事態を国民に真摯に訴えかけることが、政治にとっていかに重要かを見事に突いているといえます。

投稿者 : 2008年11月15日 08:02 : 無断転載を禁じる